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結城総司から電話を受け取り、真島淳司は翔子の家に向かおうとしていた。
正直自分が着く頃には全てが終わっているだろうが、だからと言って傍観を決め込む事など出来ない。
雨の中、寝巻き姿のまま玄関を飛び出した彼は、
「……うん……おい、亜季!」
遥か視界の隅に収めた幼馴染の名を叫ぶ。
どういう訳か彼女が向かっている先は翔子の家とは正反対だ。
「……あいつ、何をしようとしてんだ?!」
だが今は翔子のもとに向かうのが先決だ。
しかし、自分と同じ様に総司から連絡を受けたであろう亜季が、どうしてこんな行動を取るのか?
(……どうすりゃいいんだよ、くそったれ!)
悩む彼は雨の中駆け出した。
瀬川亜季は走る。
普段自分が通っている道だから間違えるはずはない。
路面を蹴り、目的地を目指す。
雨はますます激しく、彼女の両肩を叩いている。
彼女はそして立ち止まる。
目の前には戸島高校の校門。
風を切り、雨でぬかるむグラウンド駆け抜け、玄関の前まで到達する。
どういう訳か玄関の鍵は開いている。
まるで彼女を誘うかのように。
迷わず彼女は土足のままで廊下を走る。
目指す場所は文学部部室。
雨に濡れた彼女の寝巻きから廊下に雫を落としていく。
部室の手前につき、彼女は乱暴に戸を開け放つ。
彼女の眼前には漆黒の人物。
「……よく来たね、亜季ちゃん」
黒霧史記は全く邪気のない微笑みを浮かべた。
「……翔子を……助けるには、どう、すれば、いいんですか?!」
息も整えずに、亜季は食って掛かるように史記に叫ぶ。
史記は漆黒の衣服を打ち鳴らし、
「……まず、落ち着いたらどうかな」
「これが落ち着いていられますか!」
夜の校内中に響く怒号を発する。
「あれが翔子の夢、精神の世界なら、肉体だけ助けても翔子は助からないんじゃないですか?! その証拠に夢の中での翔子の足は透けていた! 最後の暗号は先輩が現れる場所を暗示しています。つまり先輩には救う手段があるということでしょう!」
ぜえぜえ、と亜季は肩で息をする。
漆黒の妖精は自身の胸の前まで両手を持ってきてぽんぽんと手を一秒間隔で数度叩いた。どうやら拍手しているつもりのようだ。
「……そこまでわかっていながら……」
だが彼女の表情には憂いが含まれている。
「どうすれば翔子を助けられるんですか!」
しかし、亜季には史記の問答に答えるつもりはないようだ。
「……方法はあるよ。私が、君達が言う所の『霊界』に穴を開ける。そこに入って君達自身の手で翔子ちゃんの魂を連れ戻してくる事は出来るよ」
「なら、私をその『霊界』とやらに飛ばして下さい!」
黒霧史記は首を横に振る。
「どうして?!」
亜季が信じられないと言った具合に叫ぶ。
「人の魂の重さは等しいの。十中八九、亜季ちゃん一人では翔子ちゃんの魂をこの世界まで持ち帰れない」
いえ、と史記は厳しい表情で告げる。
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