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その人物は夢を見る。
眼前には漆黒に身を包んだ人物。
声を掛けようとするが、声そのものがでない。
「……もう、時間がないよ」
それはその人物にとって死の宣告だった。
その人物の表情に死人のような暗さが宿る。
「……もう、時間は、ない」
呟き、黒霧史記は相対する者に語り掛ける。
「消しておいた記憶は、この世界の朝には元に戻しておくよ。お礼は私の正体を見破った人に言って置いて。物語を解いてくれないと、記憶とかはいじれないんだよ」
妖精界の掟でね、と黒霧史記は溜息をつく。
彼女に対する人物は何事かを呟く。
「うん、決断するのは貴方。それを強制する事は誰にも出来ない」
その人物は拳を白くなるまで握り締めている。
そして。
その人物は黒霧史記に向かって頭を下げた。
「お礼は良いよ。さっきも言ったけど、他の皆に宜しく言って置いて」
黒霧史記が立っている地点から、世界が、がらがらと音をたてて崩れていく。
その崩壊は留まる事を知らず、その人物の立っている地点にまでやってくる。
落ちていく。
どこまでも。
その人物は、どこまでも深い闇に落ちていく。
それはまるで。
その人物の行く末を暗示しているかのようだった
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